スペインとはどんな国か？歴史や文化、観光などわかりやすく解説！
地理と気候
スペインは、ヨーロッパ南西部のイベリア半島に位置し、ポルトガル、フランス、アンドラと国境を接し、地中海と大西洋に面した国です。国土面積は約505,990平方キロメートルで、山脈、平原、ビーチ、島々が織りなす多様な地形が特徴です。この地理的特性は、観光、農業、漁業、さらには地域ごとの生活様式や文化に深い影響を与えています。気候も地域によって大きく異なり、地中海性気候、海洋性気候、大陸性気候、亜熱帯気候が混在します。この多様性は、スペインの食文化、建築、祭り、観光資源に反映され、国内外から多くの人々を惹きつけています。スペインの自然環境は、訪れる人々に壮大な山々から穏やかなビーチまで、多彩な体験を提供します。
地形の多様性
スペインの地形は、ヨーロッパでも特に多様性に富んでいます。北部にはピレネー山脈がフランスとの国境を形成し、標高3,404メートルのアネト峰をはじめとする壮大な山々が連なります。この山脈は、ハイキング、スキー、登山の名所で、アラゴン地方のオルデサ・イ・モンテ・ペルディド国立公園は、ユネスコ世界遺産に登録され、年間約60万人が訪れます。中央部にはメセタ高原が広がり、標高600～800メートルの広大な平地は、小麦、ブドウ、オリーブの生産を支え、スペインの農業の心臓部です。南部アンダルシアのシエラネバダ山脈は、標高3,478メートルのムラセン峰を擁し、ヨーロッパ最南端のスキーリゾートとして知られ、冬には約50万人のスキーヤーが訪れます。地中海沿岸には、コスタ・デル・ソル、コスタ・ブランカ、コスタ・ドラーダなどの白い砂浜が続くビーチリゾートが点在し、年間約2,000万人の観光客が訪れます。カナリア諸島やバレアレス諸島は火山性地形が特徴で、テネリフェ島のテイデ山（3,718m）はスペイン最高峰で、火山景観と独特の動植物が生息します。テイデ国立公園は、年間約400万人が訪れるユネスコ世界遺産です。バレアレス諸島のマヨルカやイビサは、透明な海と岩だらけの崖が特徴で、ヨーロッパのセレブリティにも人気です。ガリシアのリアス式海岸は、入り組んだ湾が美しい漁業地帯で、ムール貝やタコの養殖が盛んです。ピレネー山脈は、ヨーロッパ有数の自然美を誇り、トレッキングやウィンタースポーツの聖地として知られています。この地形の多様性は、スペインの地域ごとの文化や経済を形成し、観光資源として大きな役割を果たしています。
気候の特徴
スペインの気候は、地域ごとの違いが顕著で、農業や観光に大きな影響を与えます。地中海沿岸のバルセロナ、バレンシア、アリカンテは、地中海性気候で、夏は30～35℃の暑さで乾燥し、冬は10～15℃の穏やかな気温です。この気候は、オリーブ、ブドウ、柑橘類の栽培に最適で、スペインのオリーブオイル生産の70%を支えます。北部ガリシア、アストゥリアス、バスク地方は海洋性気候で、年間降水量が1,500～2,000mmに達し、緑豊かな森林や牧草地が広がります。この地域は、酪農や魚介類が豊富で、ガリシアのタコ料理やバスクのピンチョスに反映されます。内陸部のマドリードやサラゴサは大陸性気候で、夏は40℃近くまで上昇し、冬は氷点下になることもあります。この気候差は、マドリードの煮込み料理「コシード・マドリレーニョ」のような温かい料理を生み出しました。カナリア諸島は亜熱帯気候で、年間平均気温が20～25℃で安定し、「永遠の春」と呼ばれます。この気候は、バナナ、パパイヤ、マンゴーなどの熱帯果物の栽培を可能にし、年間約1,400万人の観光客を惹きつけます。気候の多様性は、スペインの祭りや生活習慣にも影響を与えます。たとえば、地中海沿岸では夏の野外フェスティバルが盛んで、北部では雨の多い秋に室内での音楽や演劇イベントが多く開催されます。気候は、スペインの地域ごとの食文化や服装、建築様式にも影響を与え、伝統的な白壁の家やタイル屋根は、地中海の暑さを和らげる工夫です。カナリア諸島の温暖な気候は、年間を通じて熱帯果物の栽培を可能にし、観光業の基盤となっています。この気候の多様性が、スペインの地域文化をさらに豊かにしています。
歴史と文化
スペインの歴史は、古代から現代まで多様な文明が交錯する壮大な物語です。イベリア人、ローマ人、西ゴート族、イスラム教徒、キリスト教徒がこの地で文化を築き、スペインのアイデンティティを形成しました。ローマ帝国のインフラ、イスラム王朝の学問と建築、中世のレコンキスタ、植民地時代、内戦と民主化など、スペインの歴史は変遷に富んでいます。この歴史的背景が、現代のスペインの芸術、建築、祭り、言語に深い影響を与え、多文化的な魅力を作り出しています。地域ごとの文化の違いも、スペインの独自性を際立たせ、観光や文化交流の基盤となっています。
古代から中世まで
スペインの歴史は、紀元前から始まります。イベリア人やケルト人が住み、フェニキア人、カルタゴ人、ギリシャ人が交易を行いました。紀元前218年、ローマ帝国がイベリア半島を征服し、道路、アクエドゥクト、都市を建設。セゴビアのアクエドゥクトは、長さ728mで今も水を運び、メリダのローマ劇場は年間10万人が訪れる遺跡です。5世紀、西ゴート族が支配し、キリスト教が広まりました。711年、イスラム教徒が半島を征服し、コルドバのカリフ政権（8～10世紀）は、学問、医学、哲学、建築が花開いた黄金時代です。コルドバのメスキータは、850本の柱が並ぶモスクで、後に大聖堂に改修されました。グラナダのアルハンブラ宮殿は、13世紀のナスル朝の宮殿で、幾何学模様やタイル装飾が特徴です。11世紀から始まったレコンキスタは、キリスト教徒によるイスラム勢力の排除運動で、約800年かけ1492年にグラナダが陥落し完了。この年、クリストファー・コロンブスが新大陸を発見し、スペインの歴史は新たな段階に入りました。レコンキスタの過程で、トレドはキリスト教、イスラム教、ユダヤ教の共存都市として栄え、「三文化の街」として知られます。アルハンブラ宮殿やメスキータは、年間約500万人の観光客が訪れるユネスコ世界遺産です。アルハンブラ宮殿は、イスラム建築の美しさと洗練さを象徴する世界遺産として、今も世界中から観光客を集めています。この多文化の歴史は、スペインの文化的多様性の基盤となっています。
近代と現代の変遷
15世紀から16世紀、スペインは新大陸の探検と植民地化により世界の超大国となりました。コロンブスの1492年の航海は、アメリカ大陸との交易を開始し、エルナン・コルテスのアステカ征服（1519-1521年）、フランシスコ・ピサロのインカ征服（1532-1533年）は、金や銀の流入でスペインを富ませました。16世紀の「黄金世紀」は、スペインがヨーロッパの政治・文化の中心となり、文学や芸術も繁栄しました。しかし、17世紀以降、経済的衰退、植民地の反乱、スペイン継承戦争（1701-1714年）で国力は低下。19世紀には、ナポレオン戦争（1808-1814年）やラテンアメリカ植民地の独立で混乱が続きます。20世紀のスペイン内戦（1936-1939年）は、共和国派とフランコ率いる国民党派の対立で約50万人が犠牲になり、スペイン社会に深い傷を残しました。フランコ独裁政権（1939-1975年）は、抑圧的な統治で知られ、言論や文化の自由が制限されました。1975年のフランコ死後、フアン・カルロス1世が民主化を主導し、1978年に民主憲法が制定。1986年のEU加盟は、経済成長と国際的地位の向上を加速させました。2023年のスペインは、GDP約1.4兆ユーロの経済大国で、民主主義と文化の発信力で世界に影響を与えています。内戦の記憶は、現代のスペイン人の団結意識や平和への願いに影響を与え、バルセロナやマドリードでの平和イベントが定期的に開催されます。民主化後のスペインは、EU加盟を機に経済成長と国際的地位の向上を達成しました。この歴史的変遷は、スペインの現代社会の基盤を築いています。
言語と地域文化
スペインは、単一の文化ではなく、多様な地域文化と言語が共存する国です。スペイン語（カスティーリャ語）は公用語ですが、カタルーニャ語、ガリシア語、バスク語も地域で公式に使用されます。これらの言語は、教育、行政、メディアで使われ、地域のアイデンティティを強化します。祭り、音楽、ダンスも地域ごとに異なり、スペインの文化的豊かさを象徴しています。地域ごとの伝統は、観光客に多彩な体験を提供し、スペインの魅力をさらに高めています。地域文化の違いは、スペイン人の誇りであり、国民的アイデンティティの一部です。
スペイン語と地域言語
スペイン語は、世界で約5億人が話す言語で、スペインの文化的基盤です。ラテンアメリカ、米国、フィリピンでも使われ、スペイン語圏の文化を結びつけます。スペイン国内では、標準的なカスティーリャ語が行政や教育で使用されますが、地域によるアクセントや語彙の違いが顕著です。アンダルシアのスペイン語は、リズミカルで「s」音が省略されることがあり、カスティーリャのものはより明瞭です。カタルーニャ語は、カタルーニャ地方、バレアレス諸島、アンドラで約900万人が話し、独自の文学、映画、音楽が発展。ガリシア語はガリシア地方で約250万人が使用し、ポルトガル語に近い特徴を持ち、中世の詩「カンティガス」で知られます。バスク語はバスク地方とナバーラで約70万人が話し、ヨーロッパの他の言語と異なる孤立言語です。バスク語は、文字を持たない時代から口承で受け継がれ、現代では学校で教えられ、テレビやラジオでも放送されます。地域言語の保護は、1978年憲法で保証され、バイリンガル教育が普及しています。カタルーニャ語の作家メルセ・ロドレダやバスク語の詩人ガブリエル・アレスティは、地域言語文学の代表です。言語の多様性は、地域の祭りや歌、演劇にも反映され、バルセロナの「ラ・メルセ」祭ではカタルーニャ語の詩が朗読されます。バスク語の独自性は、スペインの言語的多様性を象徴する貴重な文化遺産です。この言語の多様性が、スペインの文化的魅力をさらに高めています。
地域の伝統と祭り
スペインの地域文化は、祭りや伝統行事に色濃く表れます。バレンシアの「ファジャス」は、3月に巨大な人形（ニノット）を燃やす祭りで、1年間の準備を経て作られた芸術作品が火に包まれ、約70万人が訪れます。パンプローナの「サン・フェルミン祭」は、7月の牛追いイベントで有名で、エルネスト・ヘミングウェイの小説「陽はまた昇る」で世界に知られ、年間約100万人の観光客が参加します。セビリアの「セマナ・サンタ」は、聖週間の荘厳な宗教行列で、50以上の団体がキリストや聖母の像を担ぎ、フラメンコのリズムが響きます。カタルーニャの「サント・ジョルディの日」は、4月23日に本とバラを贈るロマンティックな伝統で、バルセロナのランブラス通りが花と本で埋め尽くされます。ガリシアの「サンティアゴ巡礼路」は、中世から続くキリスト教の巡礼で、年間約30万人がサンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂を目指します。アンダルシアの「フェリア・デ・アブリル」は、フラメンコの衣装とダンス、馬車パレードが特徴の祭りで、セビリアの春を彩ります。バスク地方の「アステ・ナグシア」は、ビルバオで8月に開催され、伝統音楽と花火が人気です。これらの祭りは、地域の音楽、ダンス、衣装、食事を伴い、コミュニティの絆を深めます。たとえば、サン・フェルミン祭では、地元のバルでピンチョスを食べながら祭りを楽しむのが伝統です。サン・フェルミン祭の牛追いイベントは、スペインの勇敢さと情熱を象徴する世界的な祭りです。地域ごとの祭りは、スペインの多様性と活気を体現しています。
食文化
スペインの食文化は、地域の気候、歴史、文化を反映し、世界的に高く評価されています。パエリア、タパス、ガスパチョ、ハモン・イベリコなどの料理は、シンプルな調理法で素材の味を活かします。ワイン、シェリー、カバなどの飲み物も、スペインの食卓を彩ります。地域ごとの食文化の違いは、スペインの多様性を象徴し、美食観光の大きな魅力となっています。スペインは、ミシュラン星付きレストランが200軒以上あり、バスク地方のサン・セバスティアンは、1平方キロメートルあたりの星付きレストラン数が世界一です。食文化は、スペイン人の社交や家族の絆を深める場でもあります。
代表的な料理
スペイン料理は、地域ごとの特色が強く、新鮮な食材を活かした調理法が特徴です。バレンシアのパエリアは、サフランと米を使った料理で、ウサギ、鶏、海鮮、野菜など多様なバリエーションがあります。年間約500万皿が提供され、観光客にも人気です。タパスは、小皿料理の総称で、パタタス・ブラバス（スパイシーポテト）、ガーリックシュリンプ、クロケッタ、トルティージャ（スペイン風オムレツ）が定番です。タパス文化は、バルで友人や家族とシェアする社交の場として根付いています。アンダルシアのガスパチョは、トマト、キュウリ、ピーマンをベースにした冷製スープで、夏の暑さに最適。ガリシアのプルポ・ア・ラ・ガジェガは、タコを茹でてオリーブオイルとパプリカで味付けした名物で、年間約1万トンのタコが消費されます。カタルーニャのエスクデリャは、豆、野菜、肉の煮込み料理で、冬の家庭料理の定番です。ハモン・イベリコは、イベリコ豚から作られる生ハムで、2～4年の熟成期間が生む深い味わいが特徴。スペインは年間約4万トンのハモンを生産し、輸出額は約5億ユーロに達します。バスク地方のピンチョスは、小さな串料理で、サン・セバスティアンのバルでは1晩で数百種類が提供されます。マドリードのコシード・マドリレーニョは、ひよこ豆、肉、野菜の煮込みで、冬の定番です。カナリア諸島のモホソースは、ピリ辛の調味料で、魚やポテトに欠かせません。これらの料理は、地域の歴史や気候を反映し、スペインの食文化を豊かにします。ハモン・イベリコは、スペインの食文化の象徴であり、世界中の美食家に愛されています。これらの料理は、スペインの地域文化を味わう窓口です。
ワインと飲料
スペインは、ワイン生産で世界3位、年間約40億リットルを生産します。リオハやリベラ・デル・ドゥエロの赤ワインは、テンプラニーリョ種が中心で、国際的な賞を受賞。リオハは、年間約4億本のボトルを生産し、輸出額は約10億ユーロです。シェリーはヘレス地方の特産で、フィノ、マンサニージャ、アモンティリャードなど多様な種類があり、年間約5,000万リットルが生産されます。カバは、カタルーニャ産のスパークリングワインで、シャンパンに匹敵する品質で、年間2億本以上が生産されます。サングリアは、赤ワインにオレンジ、レモン、シナモンを加えた飲み物で、夏の野外イベントで人気。バレンシアのオルチャータは、チュファ（ヒゲイモ）から作られる甘い飲み物で、年間約2,000万リットルが消費されます。バスク地方のチャコリは、微発泡の白ワインで、魚介料理との相性が抜群です。ガリシアのアルバリーニョは、フルーティーな白ワインで、シーフードに最適。カナリア諸島のマルバシアワインは、甘口でデザートワインとして愛されます。スペインのコーヒー文化も盛んで、「カフェ・コン・レチェ」（ミルク入りコーヒー）は朝の定番。飲料文化は、地域の食材や気候を反映し、食事を豊かにします。たとえば、バスクのバルでは、チャコリを高い位置から注ぐパフォーマンスが観光客に人気です。リオハの赤ワインは、スペインのワイン文化の頂点として、世界で高い評価を受けています。これらの飲料は、スペインの食文化に欠かせません。
芸術と建築
スペインは、芸術と建築の分野で世界に多大な影響を与えてきました。ゴヤ、ピカソ、ダリといった画家や、ガウディの建築は、スペインの創造性を象徴します。ローマ、イスラム、ゴシック、ルネサンス、モダニズムなど、多様な建築様式が共存し、スペインの歴史的・文化的深みを示します。これらの芸術と建築は、観光の大きな魅力であり、スペインの文化的遺産として世界に誇られています。年間約1,000万人が、スペインの美術館や建築物を訪れます。
美術の巨匠たち
スペインは、数多くの世界的画家を輩出しました。17世紀のディエゴ・ベラスケスは、「ラス・メニーナス」（1656年）で肖像画の革新を達成し、空間と光の表現で後世に影響を与えました。19世紀のフランシスコ・ゴヤは、「5月3日の銃殺」（1814年）や「黒い絵」で戦争の残酷さや人間の闇を描き、ロマン主義の先駆者となりました。20世紀のパブロ・ピカソは、キュビズムを創始し、「レ・デモワゼル・ダビニョン」（1907年）で美術史を塗り替えました。ピカソの「ゲルニカ」（1937年）は、スペイン内戦のバスク地方爆撃をテーマに、戦争の悲劇を表現。マドリードのソフィア王妃芸術センターで展示され、年間約100万人が訪れます。サルバドール・ダリのシュルレアリスムは、「記憶の持続」（1931年）で時計が溶ける幻想的な世界を描き、世界を驚かせました。ジョアン・ミロの抽象画は、バルセロナのミロ美術館で展示され、カタルーニャの色彩を反映。現代では、アントニオ・ロペスの写実主義が注目されます。プラド美術館は、ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコの作品を収蔵し、年間約300万人が訪れます。バスク地方の画家イグナシオ・スロアガは、地域の風景を力強く描き、ビルバオ美術館で展示されます。スペインの美術は、情熱と革新の歴史です。ピカソの「ゲルニカ」は、スペイン内戦の悲劇を表現した不朽の名作です。これらの芸術家は、スペイン美術の多様性と影響力を示しています。
建築の多様性
スペインの建築は、歴史の層を反映します。ローマ時代のセゴビアのアクエドゥクトは、2,000年以上経過しても現役で、長さ728m、163のアーチが特徴です。グラナダのアルハンブラ宮殿は、13世紀のナスル朝の宮殿で、繊細なタイル装飾や幾何学模様が美しく、年間約250万人が訪れます。コルドバのメスキータは、8世紀のモスクで、キリスト教の大聖堂に改修された異文化融合の象徴。トレドのアルカサルやセビリア大聖堂は、ゴシックとムデハル様式の融合で、ユネスコ世界遺産です。ルネサンス様式のエスコリアル修道院は、16世紀のフィリップ2世の宮殿で、厳格な対称性が特徴。近代では、アントニ・ガウディのサグラダ・ファミリアがバルセロナのシンボルで、1882年から建設が続き、2026年完成予定。有機的なデザインと色鮮やかなステンドグラスが特徴で、年間約400万人が訪れます。ガウディのカサ・ミラやグエル公園も、モダニズム建築の傑作。現代のビルバオのグッゲンハイム美術館は、フランク・ゲーリーの設計で、チタンの曲線が都市再生の成功例となり、年間約120万人が訪れます。サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂は、巡礼の終着点で、ロマネスク様式の美しさで知られます。スペインの建築は、歴史と革新の融合です。サグラダ・ファミリアは、100年以上続く建設の過程自体が、スペインの芸術的情熱を象徴しています。これらの建築は、スペインの歴史と創造性を体現しています。
観光と名所
スペインは、世界有数の観光大国で、2019年には約8,400万人の観光客が訪れ、観光収入は約920億ユーロに達しました。歴史的な都市、自然景観、ビーチリゾート、島々が、多様な旅行者を惹きつけます。マドリード、バルセロナ、セビリア、グラナダなどの都市や、カナリア諸島、イビサ島、マヨルカのリゾート地は、特に人気です。スペインの観光は、文化と自然の融合が魅力で、ユネスコ世界遺産は49件（2023年時点）と世界3位。観光は、スペイン経済と地域振興の柱です。
主要都市の魅力
マドリードは、スペインの政治・文化の中心で、プラド美術館、王宮、レティーロ公園が観光の目玉です。プラド美術館は、ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコの作品を収蔵し、年間約300万人が訪れます。王宮は、18世紀のバロック建築で、2,800の部屋を持つヨーロッパ最大の宮殿。バルセロナは、ガウディのサグラダ・ファミリア、グエル公園、カサ・バトリョが人気で、地中海の雰囲気も魅力。サグラダ・ファミリアは、年間約400万人が訪れ、ガウディの天才性を体感できます。セビリアは、フラメンコと歴史的建築で知られ、ヒラルダ塔やアルカサルが訪れられます。セビリア大聖堂は、世界最大のゴシック建築で、コロンブスの墓があります。グラナダのアルハンブラ宮殿は、イスラム建築の傑作で、年間250万人が訪れ、事前予約が必須。トレドは、中世の街並みが残り、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教の共存を示す「三文化の街」としてユネスコ世界遺産。サンティアゴ・デ・コンポステーラは、巡礼の終着点で、大聖堂の「ボタフメイロ」（巨大な香炉）が観光客を魅了します。バスク地方のビルバオは、グッゲンハイム美術館が現代アートの中心で、都市再生の象徴です。バレンシアは、芸術科学都市の近未来的な建築とファジャス祭で知られます。これらの都市は、スペインの多様な歴史と文化を体現し、観光客に深い体験を提供します。バルセロナのサグラダ・ファミリアは、未完の状態でも世界中から観光客を集める建築の奇跡です。これらの都市は、スペインの多様な魅力を体現しています。
自然とリゾート
スペインの自然も観光の大きな魅力です。カナリア諸島のテイデ国立公園は、火山景観と生物多様性が特徴で、テイデ山（3,718m）はスペイン最高峰。年間約400万人が訪れ、ユネスコ世界遺産に登録されています。グラン・カナリアやランサローテは、黒い火山砂のビーチが人気。コスタ・デル・ソルは、マルベーリャやトレモリノスが中心で、年間300日以上の晴天を誇るビーチリゾート。コスタ・ブランカのアリカンテやベニドルムも、年間約500万人の観光客が訪れます。イビサ島は、ナイトライフと透明な海で若者に人気で、年間約300万人が訪れ、ユネスコ世界遺産の旧市街も魅力。マヨルカ島は、セラ・デ・トラムンタナ山脈がユネスコ世界遺産で、ハイキングやサイクリングが人気。ピレネー山脈は、スキーと登山で年間約100万人が訪れ、バケイラ・ベレトスキーリゾートはロイヤルファミリーも利用します。シエラネバダは、冬のスキーと夏のトレッキングで年間約80万人が訪れます。ガリシアのリアス式海岸は、ムール貝やタコの養殖地で、シーフードレストランが人気。アストゥリアスのピコス・デ・エウロパ国立公園は、崖と渓谷が壮大で、ハイキングコースが豊富。ドニャーナ国立公園は、アンダルシアの湿地帯で、フラミンゴやイベリアオオヤマネコの保護区として知られ、年間約30万人が訪れます。スペインの自然は、アウトドア活動やリゾートを求める旅行者に最適です。カナリア諸島のテイデ山は、スペイン最高峰として、壮大な自然を体感できる場所です。自然と文化が融合したスペインの観光地は、多様な旅行スタイルに応えます。
現代社会と経済
現代のスペインは、EU加盟国として経済的・政治的に安定しています。2023年のGDPは約1.4兆ユーロで、観光業、農業、工業、サービス業が経済の柱。観光業はGDPの約12%を占め、年間約1,800万人の雇用を支えます。スペイン人の生活は、家族やコミュニティを重視し、ゆったりとした時間が特徴。再生可能エネルギーやテクノロジー分野でも進歩し、持続可能な成長を目指しています。スペイン社会は、歴史的教訓を活かし、平和と多様性を重視する価値観で知られます。サッカー、フラメンコ、フェスティバルは、スペイン人の生活に欠かせない文化的要素です。
経済の特徴
スペインの経済は、観光業が牽引していますが、農業も重要です。オリーブオイルは年間約150万トン生産され、世界シェアの約50%を占め、輸出額は約30億ユーロ。ワインは、年間約40億リットル生産され、フランス、イタリアに次ぐ世界3位。柑橘類、アーモンド、トマトも主要な輸出品で、EU市場の20%を占めます。工業では、自動車製造が強く、フォルクスワーゲン、ルノー、セアトの工場が国内にあり、年間約250万台を生産。ファッション産業では、ZARAやマンゴが世界ブランドで、インディテックス（ZARAの親会社）は年間売上約320億ユーロ。再生可能エネルギーでは、風力発電が電力の22%を供給し、太陽光発電は10%で、EUのリーダー。バルセロナとマドリードは、スタートアップ企業やIT産業の拠点で、2023年には約2,000社のスタートアップが登録。観光業は、2019年に約8,400万人の観光客と920億ユーロの収入を生み、経済の柱。失業率は2023年で約12%、若者の失業率は約25%と課題ですが、経済は安定成長を続けています。スペインは、EUのグリーンディールに沿った投資を強化し、2050年までにカーボンニュートラルを目標とします。地域経済も活発で、カタルーニャやバスク地方は、工業とイノベーションで経済を牽引します。スペインは、オリーブオイルの生産量で世界一を誇り、食文化と経済の両方を支えています。経済の多様性が、スペインの安定と成長を支えています。
社会と生活
スペイン人の生活は、家族や友人との時間を大切にし、ゆったりとしたペースが特徴です。シエスタの習慣は都市部で薄れつつありますが、地方では昼の2～3時間、店や企業が閉まる地域も多いです。夜遅くまで続く社交的な生活は、バルやレストランでの交流が中心で、週末には家族や友人とタパスを楽しむのが一般的。教育は、6～16歳の義務教育が無料で、大学進学率は約40%。マドリードのコンプルテンセ大学やバルセロナ大学は、ヨーロッパトップクラスの学術機関です。医療は国民皆保険制度で、病院数は約800、医師数は人口1,000人あたり4人と、欧州トップクラス。サッカーは国民的スポーツで、レアル・マドリードやFCバルセロナの試合は、年間約5,000万人がテレビ観戦し、スタジアムには約100万人が訪れます。フラメンコはアンダルシア発祥の音楽とダンスで、ユネスコ無形文化遺産に登録。セビリアやグラナダのタブラオ（フラメンコ会場）は、年間約50万人の観光客が訪れます。地域の伝統音楽やダンスも盛んで、ガリシアのガイタ（バグパイプ）やカタルーニャのサルダーナは、地元の祭りで披露されます。2023年の平均寿命は83.5歳で、地中海食（オリーブオイル、魚、野菜中心）が健康に貢献。生活満足度は、OECD平均7.0に対し、スペインは7.3で、ワークライフバランスが評価されます。若者の失業率や地域格差は課題ですが、スペイン社会は活気と前向きさに満ちています。たとえば、バルセロナの「ラ・メルセ」祭では、市民が一体となって伝統を祝います。スペインのワークライフバランスは、欧州でも特にリラックスした生活スタイルとして知られています。この生活様式が、スペインの魅力をさらに高めています。
