ブリックス(BRICS)とは何か?歴史や主要な活動などわかりやすく解説!
はじめに
BRICS(ブリックス)は、新興国および発展途上国を中心に構成された国際的な枠組みであり、経済協力や政治的対話を目的とした重要な組織です。
その名称は、2001年にゴールドマン・サックスの経済学者ジム・オニールによって提唱された「BRIC」に由来し、当初はブラジル、ロシア、インド、中国の4カ国を指していました。
2010年には南アフリカが加わり、現在ではBRICSという名称で知られています。
BRICSは、世界経済において急成長を遂げる国々が集まり、グローバルな経済・政治秩序の中でその影響力を高めるための場として機能しています。
特に、新興国の声を反映させるためのプラットフォームとしての役割を果たしており、従来のG7を中心とする西側諸国主導の体制に対する代替的なモデルとして注目されています。
BRICSの重要性とその役割
世界経済において、BRICS諸国は急速な成長を遂げ、多くの分野で存在感を高めています。
これらの国々は、世界の人口の約40%以上を占め、GDPの約35%を占めるなど、経済的にも地政学的にも重要な位置を占めています。
例えば、BRICSは新開発銀行(NDB)や外貨準備基金(CRA)といった新たな国際的枠組みを創設し、グローバルサウスと呼ばれる新興国や発展途上国がより公平に国際的な資源を活用できる環境を整備しています。
一方で、BRICSの役割は経済協力だけに留まらず、政治的・社会的な課題にも対応しています。
例えば、気候変動、持続可能な開発、貧困削減といったグローバルな課題において、共同で解決策を模索する場として機能しています。
さらに、国連の安全保障理事会改革や多極的な国際秩序の推進など、グローバルなガバナンスの改善にも積極的に関与しています。
本記事では、BRICSの歴史や拡大、現在の活動、そして将来の課題について詳細に解説します。
また、BRICSがどのように世界経済や国際政治に影響を与えているのかを、具体例を交えながら検討します。
記事は以下のような構成で進められます:
- BRICSの誕生と歴史
- メンバーの拡大とその影響
- 主要な活動と国際的取り組み
- 国際社会からの評価と課題
- BRICSの将来展望
この構成を通じて、読者がBRICSの全体像を把握し、その意義と課題を理解できるようにすることを目的としています。
BRICSの誕生と歴史
BRICSの歴史は、2001年にゴールドマン・サックスの経済学者ジム・オニールによって提唱された「BRIC」という概念に遡ります。
彼の研究論文「Building Better Global Economic BRICs」は、ブラジル、ロシア、インド、中国という4つの新興経済国が、21世紀の世界経済において重要な役割を果たすと予測しました。
この論文では、これらの国々が豊富な人口や自然資源、急成長する経済を背景に、発展途上国の中でも特に注目すべき存在であると位置づけられました。
ジム・オニールの提案当初、BRICは単なる投資戦略のキーワードに過ぎませんでしたが、次第に国際的な政治・経済の枠組みとして具体化していきました。
初期メンバーと2009年の初会合
BRICが国際的な枠組みとしての第一歩を踏み出したのは、2006年9月のことです。
この時、ブラジル、ロシア、インド、中国の外相がニューヨークで開催された国連総会の場で初めて非公式に会合を行いました。
これをきっかけに、4カ国間での協力関係が強化され、2009年には初の公式サミットがロシアのエカテリンブルクで開催されました。
この初会合では、ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領、ロシアのドミトリー・メドヴェージェフ大統領、インドのマンモハン・シン首相、中国の胡錦濤国家主席が一堂に会し、世界経済の改革や協力の可能性について議論しました。
特に、グローバル経済の安定化や国際金融機関の改革が中心的なテーマとして取り上げられ、新興国の視点からの国際的な課題解決への貢献が強調されました。
また、このサミットでは、ドルに依存しすぎない新たな国際準備通貨の必要性が提案され、世界の金融市場にも大きな影響を与えました。
南アフリカの加入とBRICSへの名称変更
BRICという枠組みは、2010年に重要な変化を迎えます。
南アフリカが同年12月に正式にメンバーとして加わることが決定し、翌年2011年に中国・三亜で開催されたサミットから、BRICS(ブリックス)という名称が使用されるようになりました。
南アフリカの加入は、アフリカ大陸を代表する国としての位置付けが重要視された結果であり、BRICSが単なる新興経済国の枠組みではなく、より広範なグローバルな連携を目指すものへと発展した象徴的な出来事となりました。
南アフリカが参加することで、BRICSは地理的にも多様性を増し、アジア、南米、ヨーロッパ、アフリカという4大陸を結ぶ国際的な組織となりました。
初の五カ国体制となった2011年の三亜サミットでは、貧困削減、持続可能な開発、国際貿易の改善といった幅広い課題に取り組むための具体的な議論が行われました。
これにより、BRICSは単なる経済協力の枠組みを超え、国際社会における政治的影響力の拡大を目指す一大プラットフォームへと進化していきました。
BRICSの拡大と新メンバー
BRICSはその設立以来、新興国や発展途上国を代表する重要な国際枠組みとして活動を続けてきましたが、2024年以降、大幅なメンバー拡大を迎えました。
この拡大により、BRICSはさらに多様性を高め、新たな地理的・経済的な影響力を獲得しました。
特に、エジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、そしてインドネシアが正式メンバーとして加わったことで、BRICSは新たな段階に進みました。
2024年以降のメンバー拡大
2024年のBRICSサミットにおいて、エジプト、エチオピア、イラン、UAEの4カ国が正式にメンバーとして参加しました。
さらに、2025年1月にはインドネシアが正式に加盟し、BRICSは10カ国体制へと拡大しました。
これにより、BRICSは従来の5カ国からさらに多様化し、アフリカ、中東、東南アジアという新たな地域を代表する国々を含む形となりました。
新たなメンバーの加入により、BRICSは世界人口の約46%、GDP(購買力平価ベース)で35%以上を占める巨大な経済ブロックとなりました。
例えば、エチオピアの参加はアフリカにおける経済的発展の象徴であり、UAEの参加は中東地域における影響力の拡大を示しています。
また、インドネシアの加入は、東南アジア地域における代表国としての役割を果たし、BRICSがさらにグローバルな枠組みへと進化することを後押ししました。
BRICS+の概念と「パートナーステート」の導入
BRICSの拡大に伴い、新たに「BRICS+」という概念が導入されました。
これは、正式メンバー以外の国々にもBRICSの活動に参加する機会を提供し、協力関係を深めることを目的としています。
2024年のサミットでは、アルジェリア、トルコ、カザフスタン、ベラルーシなど、13カ国が「パートナーステート」として招待されました。
この新しいステータスは、正式メンバーとしての資格を持たない国々がBRICSの枠組みを活用しつつ、将来的な加盟の可能性を模索するためのステップとして設けられたものです。
パートナーステートの導入は、BRICSが柔軟かつ包括的なアプローチを採用し、多極化した国際秩序の実現を目指していることを示しています。
新しいメンバーの参加による影響と意義
新メンバーの参加によって、BRICSは経済的、政治的な影響力をさらに強化しました。
まず、エネルギー資源の豊富なイランとUAEの参加により、BRICSはエネルギー政策においても重要なプレイヤーとなり、国際市場での価格安定化や供給チェーンの強化に貢献できる立場を獲得しました。
また、エジプトとエチオピアの加入はアフリカ大陸の声をBRICSに反映させる重要な一歩であり、地域の開発と経済協力を推進する役割を果たします。
さらに、インドネシアの加盟は、ASEAN地域との連携を深め、BRICSがグローバルな経済協力のプラットフォームとしての地位を強化する契機となりました。
これにより、BRICSは単なる新興国の枠組みを超え、多様性に富む国際的な経済連携のモデルとしての地位を確立しつつあります。
総じて、新しいメンバーの参加はBRICSの成長と多極化した国際秩序の形成を促進し、G7を中心とした既存の国際体制に対する代替的な選択肢を提供することにつながっています。
このような進展は、グローバルな課題に取り組む上で、BRICSがますます重要な役割を果たすことを示しています。
BRICSの主要な活動と機関
BRICSは、その経済的および政治的影響力を活用し、さまざまな分野で国際的な活動を展開しています。
特に、新開発銀行(NDB)やコンティンジェント・リザーブ・アレンジメント(CRA)、BRICSペイといった金融・経済的な取り組みは、既存の国際体制に対する重要な代替案を提示する役割を果たしています。
さらに、統計共同出版物やデジタル経済分野での連携といった取り組みは、BRICS諸国間の協力を深化させると同時に、世界的な課題に対する新しい視点を提供しています。
新開発銀行(NDB)とその目的・活動内容
新開発銀行(NDB)は、BRICSが設立した国際的な金融機関で、2014年のフォルタレザサミットで設立が決定されました。
その目的は、インフラ整備と持続可能な開発を促進するために、新興国および発展途上国に資金を提供することです。
本部は中国・上海に設置され、現在ではメンバー諸国を含む幅広い地域でのプロジェクト支援を行っています。
NDBの活動は多岐にわたり、道路や港湾、エネルギーインフラの建設から再生可能エネルギーの導入支援に至るまで、多くのプロジェクトを推進しています。
これまでに53のプロジェクトが実施され、総額150億ドル以上の融資が提供されました。
さらに、2021年にはバングラデシュ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)などが加盟し、対象地域が拡大しました。
NDBは、既存の国際通貨基金(IMF)や世界銀行が主導する開発モデルとは異なり、平等なパートナーシップと地域間の協力を強調する点が特徴です。
BRICSのコンティンジェント・リザーブ・アレンジメント(CRA)
コンティンジェント・リザーブ・アレンジメント(CRA)は、BRICS諸国が金融危機や通貨危機に対処するための枠組みとして2015年に創設されました。
これは、各国が外貨準備金をプールし、必要に応じて迅速に資金を提供できる仕組みを構築するものです。
CRAの設立当初、総額1000億ドルの資金が確保され、各国の負担割合は中国が410億ドル、ブラジル、インド、ロシアがそれぞれ180億ドル、南アフリカが50億ドルとなっています。
CRAは、グローバルな金融市場の変動によるリスクを軽減し、新興国経済の安定を確保するための重要な役割を果たしています。
IMFに代わる支援メカニズムとして位置づけられ、南南協力の一環としての意義も強調されています。
BRICSペイや通貨バスケット構想
BRICSペイは、BRICS諸国間での貿易や金融取引を円滑化するために構想された国際決済システムです。
これは、既存のSWIFTシステムに代わるものとして開発が進められており、特に国際的な制裁や金融障壁に対するリスク回避を目的としています。
また、BRICSは「通貨バスケット」構想も推進しており、加盟国の通貨(レミンビ、ルーブル、ルピー、レアル、ランド)を基盤とした新しい国際準備通貨の可能性が議論されています。
この通貨バスケットは、貿易や金融取引をより安定的かつ公平に進めるためのツールとして期待されており、グローバルなドル依存からの脱却を目指す取り組みの一環です。
これにより、BRICS諸国間の経済連携がさらに強化されると同時に、多極的な国際金融システムの構築が促進されると考えられています。
統計共同出版物などの取り組み
BRICSは、統計データの共有と標準化を目的として、2011年以降、毎年統計共同出版物を発行しています。
この出版物は、各国の経済状況や社会指標を包括的に比較するための基盤を提供し、加盟国間の政策決定を科学的データに基づいて支える役割を果たしています。
また、情報通信技術(ICT)の分野では、光ファイバーケーブルプロジェクト「BRICSケーブル」やデジタル経済に関する協力も進められています。
これらの取り組みは、新興国間の情報通信インフラを強化し、データの安全性と独立性を確保するための重要なステップとされています。
BRICSの主要な活動と機関は、単なる経済的協力を超え、政治的・社会的な課題への対応や、国際的な影響力の拡大を目指す包括的な取り組みへと進化しています。
これにより、BRICSは世界経済の新しい可能性を切り拓くプラットフォームとして、ますます重要性を増しています。
BRICSと国際社会への影響
BRICSは、新興国や発展途上国の利益を代表し、国際社会における影響力を拡大しています。
その活動は、既存の国際秩序に挑むと同時に、グローバルな課題への取り組みを目指しています。
特に、G7との関係やグローバルサウスの連携、多極化する世界の実現に向けた取り組みは、国際社会におけるBRICSの役割を示す重要な要素です。
一方で、BRICS内には経済的不均衡や内部分裂の可能性といった課題も存在し、これらの問題が将来の影響力に影響を及ぼす可能性があります。
BRICSとG7との関係
BRICSは、G7(アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、カナダ)に代表される先進国中心の枠組みと対比されることが多く、これに代わる新しい国際的なプラットフォームとして位置付けられています。
G7が主に先進国の視点から国際問題に取り組む一方、BRICSは新興国や発展途上国の声を反映させることを目指しています。
BRICSとG7の間には経済的・政治的な競争が存在しますが、特に国際金融体制の改革や気候変動への取り組みといった分野でのアプローチの違いが顕著です。
例えば、G7は主に西側諸国主導の国際通貨基金(IMF)や世界銀行を通じた支援を行う一方、BRICSは新開発銀行(NDB)やコンティンジェント・リザーブ・アレンジメント(CRA)を活用し、新興国の視点からの解決策を提案しています。
これにより、国際社会における多様な視点の必要性が浮き彫りになっています。
グローバルサウスや多極化世界の実現に向けた取り組み
BRICSは、グローバルサウスと呼ばれる新興国や発展途上国との連携を強化し、多極化した世界の実現を目指しています。
この取り組みは、BRICS+の概念や「パートナーステート」の導入を通じて具体化されています。
2024年の拡大により、BRICSはエジプト、エチオピア、イラン、UAE、インドネシアを新たに迎え入れ、地理的にも経済的にも多様性を増しました。
また、BRICSは「開発のための南南協力」を掲げ、新興国同士の連携を強調しています。
この連携は、貿易、金融、技術共有といった具体的な分野での協力を促進し、従来の先進国中心の国際秩序を補完する形で展開されています。
さらに、国連の安全保障理事会改革や気候変動に関する国際的な交渉においても、新興国の利益を代表する声を上げています。
これにより、BRICSは、国際社会におけるパワーバランスを再構築する重要なプレーヤーとなっています。
批判と課題:経済的不均衡、内部分裂の可能性
一方で、BRICSにはいくつかの批判や課題も存在します。
最大の課題の一つは、メンバー間の経済的不均衡です。
例えば、中国はBRICS全体のGDPの70%を占める圧倒的な経済力を持つ一方で、南アフリカやエチオピアの経済規模は比較的小さいです。
このような不均衡は、意思決定過程における権力の集中や一部メンバー国の影響力低下といった懸念を引き起こしています。
また、BRICS内部には地政学的な対立も存在します。
例えば、インドと中国の間には国境を巡る長年の争いがあり、これが協力関係に影響を与える可能性があります。
さらに、ロシアの国際的な孤立や、経済制裁による影響もBRICS全体の活動に影を落としています。
このような課題を克服するためには、BRICSがより包括的で柔軟な協力モデルを採用し、各メンバー国が対等に参加できる体制を構築することが求められています。
それにより、BRICSはその潜在的な影響力を最大限に発揮し、多極化する世界の中でリーダーシップを発揮できるでしょう。
総じて、BRICSは国際社会における重要な役割を果たしていますが、持続可能な成長と連携を実現するためには、内部の課題に対する取り組みが不可欠です。
今後、BRICSがどのように進化し、グローバルな課題に対応していくかが注目されています。
BRICSの未来と課題
BRICSは、新興国や発展途上国の利益を代表する国際的な枠組みとして、拡大を続けながらその影響力を強化しています。
しかし、拡大に伴う課題や内部的な対立が、その実効性と統一性に影響を及ぼす可能性があります。
また、国際的な金融システムの変化への対応や、メンバー間の力関係のバランスを取ることがBRICSの未来を左右する重要な要素となります。
拡大後の統一性や実効性の懸念
2024年以降、新たなメンバーを加えたBRICSは10カ国体制となり、地域的にも経済的にも多様性を増しました。
しかし、この拡大は、統一性や実効性に対する懸念も生んでいます。
特に、メンバー間の経済規模や発展段階の違いが意思決定プロセスを複雑にし、共通の目標や戦略を形成する上での障害となる可能性があります。
例えば、中国やインドといった経済大国と、エチオピアや南アフリカのような発展途上国の間では、優先事項や政策目標が大きく異なります。
また、新メンバーが参加したことで、各国間の対話や協力が増える一方で、内部調整にかかる時間やコストも増加しています。
これにより、迅速な意思決定や実行が難しくなるリスクが存在します。
米ドル依存からの脱却とデジタル通貨への移行
BRICSの主要な目標の一つは、米ドル依存からの脱却です。
これを実現するために、BRICSは通貨バスケット構想やデジタル通貨の導入を模索しています。
例えば、各国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)を基盤とした決済システム「BRICSペイ」や「BRICSブリッジ」が検討されています。
このような取り組みは、米ドル中心の国際金融システムへの挑戦を意味し、グローバルな多極化を推進する重要なステップとされています。
しかし、これにはいくつかの課題も伴います。
まず、各国の経済政策や通貨の安定性に対する依存度が異なるため、統一的なデジタル通貨の運用には時間がかかる可能性があります。
さらに、インフラ整備や技術開発、国際的な信頼構築といった要素も成功の鍵となります。
中国主導のイメージと他国の立場
BRICSにおける中国の影響力の大きさは、他のメンバー国との間で摩擦を生む可能性があります。
中国はBRICS全体のGDPの70%を占めており、経済的にも政治的にも大きな存在感を持っています。
そのため、BRICSが「中国主導」の枠組みと見なされることがあり、これが他国の懸念を引き起こしています。
例えば、インドは中国との領土問題を抱えており、この対立がBRICS内での協力に影響を与える可能性があります。
また、ロシアや南アフリカといった他のメンバー国が平等なパートナーシップを維持できるかどうかも重要な課題です。
これを克服するためには、中国が過剰な支配を控え、他のメンバー国がより積極的にリーダーシップを発揮する必要があります。
地域的および国際的影響力をどう高めるか
BRICSが地域的および国際的影響力を高めるためには、より包括的で実効的な戦略を採用する必要があります。
特に、地域レベルでの協力を深め、各国の強みを活かしたプロジェクトを推進することが求められます。
例えば、新興国間での貿易協定の締結や、インフラ整備、教育、医療分野での協力が挙げられます。
さらに、BRICSは国連やG20といった国際的な場での発言力を強化し、多極化した世界秩序の中で存在感を高める努力を続ける必要があります。
また、他の発展途上国との連携を強化することで、グローバルサウス全体の利益を代表するリーダーとしての地位を確立できます。
総じて、BRICSの未来はその内部的な課題の克服と、国際社会での効果的な戦略の実施にかかっています。
拡大したメンバー国が共通の目標に向けて連携し、多様性を活かした協力体制を築くことが成功の鍵となるでしょう。
BRICSに対する各国の反応
BRICSはその経済的・政治的影響力を背景に、国際社会からさまざまな反応を引き出しています。
特に、西側諸国や新興国、さらには参加希望国の見解は、BRICSの将来的な発展に大きな影響を与える重要な要素です。
また、グローバルな世論調査の結果も、BRICSがどのように世界中で認識されているかを示しています。
これらの反応は、BRICSの意義や課題を理解するうえで不可欠な指標となります。
西側諸国(特にアメリカやEU)の反応
西側諸国、とりわけアメリカやEUは、BRICSを既存の国際秩序への挑戦とみなす傾向があります。
BRICSが米ドル依存の脱却や新しい通貨システムの導入を推進していることは、西側諸国の経済的および地政学的な優位性を脅かす可能性があると見られています。
アメリカでは、BRICSの活動が「反米的」と解釈される場合もあり、特に通貨バスケットやデジタル通貨の提案は、ドル支配の縮小につながるとして懸念されています。
例えば、2024年のサミット後、アメリカの一部の専門家はBRICSの通貨構想が成功する可能性を疑問視する一方で、その影響を無視すべきではないと警告しました。
EUでは、BRICSの活動を注視しつつも、加盟国の一部は比較的柔軟な姿勢を取っています。
特にフランスやドイツなどは、BRICSメンバーとの経済協力の拡大を模索しており、全面的な対立よりも相互利益を追求する姿勢を見せています。
新興国や参加希望国(トルコ、サウジアラビアなど)の見解
BRICSは、新興国や発展途上国にとって、国際的な発言力を高めるためのプラットフォームとして注目されています。
特にトルコやサウジアラビアなどの参加希望国は、BRICSへの加盟が自国の経済的・政治的利益に寄与すると見ています。
トルコは2024年に正式な加盟申請を行い、NATO加盟国でありながらBRICSとの連携を強化する意図を示しました。
エルドアン大統領は、「BRICSは多極化した世界秩序の構築に貢献する重要な枠組みだ」と述べ、自国の戦略的立場を強調しています。
一方で、トルコのNATOとの関係がBRICS内での協力にどのように影響するかは、今後の注目点です。
サウジアラビアは、2023年に加盟の招待を受けましたが、2024年時点ではまだ正式な加盟を保留しています。
サウジアラビア政府は、BRICS加盟が経済多角化や地域的リーダーシップの強化に寄与する可能性を評価していますが、アメリカや西側諸国との関係維持を考慮する必要があるため、慎重な姿勢を取っています。
グローバルな世論調査の結果
BRICSに対する世界各地の人々の見解を反映した世論調査の結果は、地域ごとの反応の違いを明確に示しています。
2023年後半に実施されたガラップ国際調査によると、BRICSへの認知度や好感度は国や地域によって大きく異なります。
調査結果によると、BRICSに最も好意的な意見が見られたのは、ロシア(38%)やイラン(37%)、ナイジェリア(36%)といった新興国でした。
一方、西側諸国、特にスウェーデン(45%)、スペイン(30%)、アメリカ(30%)では、BRICSに対して否定的な意見が多数を占めました。
また、BRICSへの認知度も国によって差がありました。
調査対象の3分の1以上の人々はBRICSについて「聞いたことがない」と答えており、特に欧州や北米ではその傾向が強い一方、アジアやアフリカでは認知度が比較的高いことが示されています。
これらの調査結果は、BRICSが国際社会においていまだ発展途上の影響力を持つ一方で、地域や国によって受け入れ方が異なることを示しています。
今後、BRICSがどのようにしてその認知度や信頼性を向上させ、国際的な影響力を強化していくかが注目されます。
まとめ
BRICSは、新興国や発展途上国を代表する国際的な枠組みとして、これまで多くの成果を挙げ、国際社会における重要な役割を果たしてきました。
その意義は、従来の西側主導の国際秩序に対する代替案を提示し、多極化した世界の実現に向けた新たな方向性を示している点にあります。
さらに、新開発銀行(NDB)や通貨バスケット構想、南南協力の推進といった具体的な活動を通じて、経済的および地政学的な影響力を強化しています。
これまでの成果
BRICSは、2009年の設立以来、メンバー国間の協力を深め、国際的な舞台での発言力を高めてきました。
特に、新開発銀行やコンティンジェント・リザーブ・アレンジメント(CRA)は、西側主導の国際金融機関に対する代替手段として重要な役割を果たしています。
これらの取り組みは、新興国の経済的自立を支援し、世界的な経済不均衡を是正する可能性を秘めています。
また、BRICS+や「パートナーステート」といった概念を通じて、参加希望国との連携を拡大し、国際社会における包摂性を向上させています。
将来の可能性
BRICSの将来には多くの可能性が秘められています。
特に、デジタル通貨や地域間のインフラ整備、気候変動対策といった分野での協力は、持続可能な発展を促進し、グローバルサウスにおける経済的および社会的利益を最大化する潜在力を持っています。
さらに、新規メンバーの参加により、地域的および分野的な多様性が強化され、より広範な課題に対応する能力が高まるでしょう。
国際秩序における影響力と期待
BRICSの影響力は、国際秩序の再構築において重要な役割を果たしています。
特に、グローバルサウスの声を反映させるプラットフォームとしての機能は、国際社会における平等性と多様性を促進しています。
一方で、内部の経済的不均衡や地政学的な対立といった課題を克服する必要があります。
これらの課題を解決することで、BRICSはより効果的で影響力のある国際的なアクターとしての地位を確立できるでしょう。
総じて、BRICSはその多様性と柔軟性を活かしながら、持続可能な経済発展と多極化した国際秩序の構築に寄与する可能性を持っています。
今後のBRICSの動向は、国際社会における新たなパワーバランスの形成において重要な指標となるでしょう。
ディープラーニングとは何なのか?基本概念や応用例などわかりやすく解説!